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「私のサロメ」を作るにあたって、スタイリストの井上さんが表現したいと思ったのは、サロメの持つ"清らかさ"と"欲望"でした。
もともと純粋で清らかな心を持ったサロメは、母や義父王の淫らな生活を糾弾して囚われた洗礼者ヨハネに心を奪われます。恋心は募るいっぽう。でもあらゆる手を尽くしてヨハネを誘惑するサロメを、神に仕えるヨハネは受け入れようとしません。心が届かないからかえって欲望は肥大化し、清らかな心を超えて、ついには心に憎しみが生まれます。そしてさらに愛するものの破壊へと進んでいくのです。
「サロメの中にある清らかな心と欲望、この二つをどうやって現すか。イメージはすぐに浮かびました。サロメはあくまでも清らかに作り、欲望は7枚の布でつくる"背景"で表現しよう。」
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"7枚の布"は、ヘロデ王の前で1枚ずつ脱ぎ捨てながら、最後には全裸になって踊ったときにサロメがまとった薄衣です。井上さんのコンセプトに合わせて背景を作ったのは、フォトグラファーのフルカワチヒロさん。欲望の化身となったサロメの激情を、黒い布の重なりの向こうで複雑な光を放つ真っ赤な布に託しました。
「純粋なサロメを欲望が絡みとる、というイメージを"背景"で表現するために、井上さんと相談した結果、基本の色を赤と黒にしました。もちろんサロメの最も激しい究極の欲望を表すのは赤。それも複雑な色を放つギラついた赤い布。この光に当たると様々な色を出す赤布を見つけたときには、これだ!って嬉しかったですね」
際限なく広がる欲望は井上さんのスケッチに従って、全て黒の薄布や厚布、それに光沢のある黒い素材を重ね合わせて七重にし、表現しました。
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赤い布の前に幾重にも重なる黒い布。そしてその前に立つサロメ。黒い欲望は彼女を包み込もうしますが、サロメのピュアな魂はまだ清らかさを保っています。そんなサロメの衣装は、中野先子さんがデザインし制作しました。
「"欲望に絡みとられる"わけですから、押し寄せる欲望に包み込まれそうになるサロメの衣装は、欲望と同じ黒色にしました。もちろん王女の衣装ですから、ゴージャス感と気品は必要ですし、その上でサロメの清らかさを際だてるような衣装ですよね。でも黒に黒、しかも質感でトーンを変えるというのは、初めに考えた以上に難しくて、大変でした」
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