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Lapland
“Hello, from the world!”は、世界の様々な街からのファッション・レポートです。
第25回は、フィンランドの北部、サンタの故郷と言われているラップランドから、
カウコ・ウウソクサさんが写真とお便りを送ってくれました。
街のファッションスナップ Hello! from the world VOL.25
 今僕はヘルシンキから飛行機で1時間ちょっと、さらに車で1時間ほどの北極圏にあるサンタの故郷ラップランドのイナリという街に来ています。イナリはフィンランドで2番目に大きいイナリ湖のある、先住民族サーメ人の聖地です。ラップランドの夏はとても短くて、8月にはもう秋の風が吹いています。夕方には薄手のウールのセーターかフリースが必要かな。でも空気は本当に澄んでいて、水も世界中で一番クリーン。深い緑の森に囲まれた湖で釣りをしていると、もう最高に幸せ!です。
透き通るような白い肌に白の
ライナー入りブラックジャージがシックです
 プラチナブロンドの女の子はイダ・ランズマン。彼女は14歳で、イナリのアンジェリ・ヴィレッジに住んでいます。そこはイナリから60キロほど西にあるとても小さな村で、家は全部で100軒もありません。彼女の写真はイナリのジュウチュア川のそばで撮りました。イダはそこにあるランタ・マリというホテルで、夏休みの間アルバイトで働いています。中学生のイダは夏には釣りを、冬にはスノーモービルの運転を楽しんでいて、将来は学校の先生をしながらトナカイを飼いたいそうです(ラップランドのこども達はトナカイが大好きです)。
 今日のイダは黒できめた大人っぽいファッション。肌が透き通るように白いので黒がとってもシックです。フロントのジッパーと袖の白いラインが気に入っているとか。短いトップスとヒップハンガーのパンツは、この夏の若者の定番です。長いシルバーチェーンのピアスもおしゃれでした。
イダ・ランズマンさん
ストレートなミディアムボブ。普段は肩までおろしているそうですが、今日は7、3で分けた前髪を自然に流して、全体を後ろで束ねています。さらっとした金髪が、とても綺麗。
※画像をクリックすると拡大されます。
イダ・ランズマンさん
インガー・アン・アーレラさん
大胆な配色が美しい民族衣装
森に立つ姿からヨークの調べが聞こえそう
*ヨークはサーメに伝わる古い歌
 サーメの民族衣装を着ているのはインガー・アン・アーレラ。生粋のエノンテキオ(フィンランドの原住民族)で、今はイナリに住んでいます。彼女はサーメ社会の健康組合で、サーメの文化やライフスタイルを基本にした健康サービスをしています。日本のアイヌのようなフィンランドの先住民族サーメ人は、フィンランド、それもほとんどラップランドに6500人ほど暮らしています。サーメの民族衣装はカラフルな色が特徴で、インガーが着ているブルーに赤というのも、とっても目を引くカラーですよね。もちろん普段は普通のファッションですが、お祭りや何かの行事の時にはこの服を着るそうです。
インガー・アン・アーレラさん

濃い髪の色が少ないフィンランド人のなかでは、サーメの人たちのブラウンヘアはとても目立ちます。全体に厚めのロングヘアで、燃えるような赤をポイント的にカラーリング。民族衣装の赤いスカーフによく合っています。
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【 サーメ人 】
サーメ人サーメ人
 サーメの人々はヨーロッパの北東にいる唯一の北ヨーロッパの先住民族です。彼らの祖先は、紀元前1万年〜4,000年頃にはコムサと呼ばれ、まだどこにも国境がない頃からここに住んでいました。現在、世界中に約7,8万人います。そのうちフィンランドに約6500人が暮らしています。彼らは20世紀の後半まで、昔ながらのトナカイ放牧を中心とした生活を守り続けていましたが、今では定住するようになり、近代的な工業やサービス産業の恩恵を受けるようになりました。1割ほどのサーメ人は今でも放牧生活を続けていますし、サーメ人とトナカイとはやはり切っても切れない親しい関係があるようです。サーメの人々の中には古くからの伝統・文化が今も色濃く残っています。
 フィンランド語に影響を与えたサーメ語には、9つの異なる言語があって、中にはお互いに理解できない言語もいくつかあるようです。その中で最も小さな言語グループがイナリです。フィンランドの小学校では、母国語としてサーメを話す生徒は、全ての学科を彼らの言語で勉強することができます。
 サーメの民族衣装を見ると、それぞれどの民族の出身かということがわかります。彼らは衣装から、たくさんのメッセージを読みとることができます。写真はインガーアンと彼女の娘です。彼女は11歳。とっても元気な“トナカイ少女”で、トナカイに関する仕事があるときにはいつでも手伝っています。ブルーに燃えるような赤のドレスは、深い緑の森にも、真っ白の雪原にも映えますよね。
サーメ人
【 ジュウチュア川 】
 森の中を流れるジュウチュア川。水はとっても冷たくて底が見えるほど透き通っています。
ジュウチュア川 ジュウチュア川
ジュウチュア川 ジュウチュア川
【 イナリ湖 】
 
イナリはフィンランドの北部、ラップランドにあります。夏は白夜といって、ほとんど夏の間中、太陽は地平線の彼方に沈みません。そのかわり冬には2、3カ月の間、太陽は地平線から顔を出しません。でも冬には大空を美しい光のショーで彩るオーロラがあります。
 ラップランドには新鮮な空気や飲めるほど美しく清らかな川や湖を持つ北極圏の自然を求めて、世界中から観光客がやってきます。神秘的な自然のパワーに触れたいならば、ハイキングやフィッシングの最高の場所がたくさんあります。ひょっとすると夏休みをすごしているサンタが、あなたの隣で釣りをしているかもしれませんよ。
イナリ湖 イナリ湖
▲ フィンランドで2番目に大きな湖、イナリ湖。曇り空でちょっと寒そうな感じ。 ▲ 夜中2時くらいに撮ったイナリ湖。霧のかかった太陽が地平線の上にあります。
ラップランド
 夏の間は太陽が沈まず、冬の間は太陽が昇らない北極圏の地ラップランド。スキーやカヌー、フィッシング、ハイキングなど、都会では味わえないアクティビティが年間通じて楽しめるリゾート地として、たくさんの観光客が訪れています。 特に秋から冬にかけては、紅葉(ルスカ)やオーロラ鑑賞が大人気。木々の黄葉はもとよりベリーの葉の紅葉で地面が真っ赤に染まる紅葉や大自然の神秘オーロラは、日本では味わえないものです。厳しい自然が生み出す美しい景色や果てしなく続く静寂、先住民族のサーメ人の色鮮やかで伝統的な文化など、ラップランドは不思議な魅力で溢れています。
Reporter
 カウコ・ウウソクサさんはヘルシンキで柔術の道場を開いています。鍼灸や気効にもくわしく、日本にも3年ほど滞在して勉強した親日家です。彼は関西弁アクセントのちょっと面白い日本語を話します。




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