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ファースティングによる身体の変化は、カロリーと食塩の摂取が無いことにより起こります。
この二つに身体がどう反応して生命を保つのか、ファースティングのメカニズムを説明しましょう。 |
人のエネルギー貯蔵量は
何と80日分?! |
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Cahillという人の研究によると、標準体重が70キロの人のエネルギー貯蔵量は、糖質が約半日分(1日2000kcal消費するとして)、蛋白質が約12日分で、脂肪は何と67.5日分もあるとか。ということはファースティング中のエネルギー源は、半日以後には蛋白質と脂肪になり80日分。この事実を知っていたら、例えば遭難しても、水などの条件があればそんなに慌てなくてもいいってことですよね。
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ゼロにならない血糖値 |
ファースティング半日後、体内にブドウ糖はもうありません。でも脳の神経細胞や赤血球、白血球はブドウ糖で生きているので、どんな時でもブドウ糖が必要です。そこで筋肉を分解してアミノ酸にし、肝臓でブドウ糖を製造。最低限の量を確保します。この時働くのが、副腎からでてくるコルチゾールで、これはアトピー性皮膚炎の治療で有名な糖質ホルモンです。ってことは、ファースティングは自分の体内で自分がやるステロイド療法ってことでしょうか。
さらにファースティングが長期化すると、神経細胞は脂肪から作られるケトン体を食べるようになるので、筋肉がなくなる心配もありません。 |
ケトン体はファースティングのオタスケマン |
心臓や腎臓などの臓器、筋肉などはおなかの脂肪が分解されてできた遊離脂肪酸、あるいは遊離脂肪酸が肝臓で変化したケトン体を食べることができます。ケトン体はたくさん生産されると尿に放出されるので、ファースティングが進行すると量が増えていき、復食でカロリーが増えると減っていきます。だから毎日ケトン体の量を測ってファースティングの経過を見るのに便利ですね。 |
自律神経系ホルモンもあれやこれやの大活躍 |
グリコーゲンを分解してブドウ糖を作ったり、お腹の脂肪から遊離脂肪酸を作るときに働くのが自律神経系のホルモンです。またファースティング中の脱水症や血圧低下を防ぐために、心臓の収縮回数を増やしたり、体中の細い動脈を縮めたりもします。というのもファースティング中は尿から塩分をとるので、そのとき脱水気味になり血圧が下がるからなのですが、これも復食後は元の分泌量に戻ります。 |
消費カロリーを低くするのは甲状腺ホルモン |
ファースティング、即ち飢餓状態になると、生命体としては当然1日でも長く生き延びるために基礎代謝を下げようとします。つまり自動車だったら排気量を少なくするというわけです。この時働くのが、基礎代謝をコントロールしている甲状腺ホルモンです。ということは、長期のファースティングで体重はそんなに落ちないということですよね。 |
副腎のホルモンで尿中の食塩を再利用 |
さて食塩ですが、普段は100gちょっと食べて、同じくらいの量を尿から出しています。だからファースティング中には尿に食塩を排出しないで、反対に副腎から分泌される電解質ホルモンで尿から再吸収します。ただ最初の数日はホルモンの分泌は少ないので、その間は食塩が水をともなって漏れ、脱水が起こります。ファースティング中に1日最低2000ccの水を摂取するのは脱水対策ってわけです。 |
ざっと書きましたが、ファースティングのメカニズムってすごいでしょ?この他にも変化するものはまだまだありますし、また変化してはいけないものもあります(当然それらは変化しないようなシステムが働いています)。そしてそれらの変化や不変化は、すべて調和して起こっているのです。こう考えると、ファースティングというのは、まさに「調和の最高峰」。ファースティングで、自分の中にある素晴らしい生命力を体感できるというわけです。 |
*「絶食療法」についての内容に関しては、
今回の取材、および笹田信五著『絶食療法』(NHK出版)によります。 |
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