美容師になって今年で13年目を迎えるので、思い切って7カ月前に独立してこのサロンを持ちました。”なんで心斎橋や南船場じゃなく千日前？”と聞かれることも多いのですが、僕自身が大阪の下町の出身だから、どこか雑多な雰囲気が残る街並みや、幅広い世代の人が行き交う千日前が気に入っちゃって(笑)。現在はまだスタイリストが僕だけなので、毎日忙しいし充実していますね。そもそも僕がこの世界に入ったきっかけというのは、昔から美容師を目指していた、というわけではないんです。ずっとバンド活動をしていて、バンドと両立できる仕事、つまりあまり髪形やファッションに制約がない仕事って何だろう？と考えたときに、美容師っていいな、と(笑)。それでTOA美容専門学校に入学したんですが、入学してみてからこの仕事の面白さや魅力に開眼して、そこからはバンド活動は辞め、美容師一本です。きっかけは単純なことでも、実際に学んでみてから気付く場合もあるんだな、と実感した瞬間でしたね。元々何かを”創りだす”ことが好きだったから、今にして思えば、自分が美容師になったのは必然的な部分もあったのかな、と思っています。

  店名のBuzz salon for hairの意味ですが、イメージは花なんです。種を植えて水をやり、綺麗な花を咲かせるまで、その花を見守りながら飛び続ける蜂のような存在でありたい。そう願って、花がゲスト、蜂が僕らスタイリスト、という思いを込めて名付けました。サロンをやっていくうえで、そして美容師という立場でゲストと接していくうえでも、何より大切なのはゲストとの信頼関係だと思います。信頼されているからこそ、毎日の仕事に充実感を感じられるのだと自分自身日々感じていますね。また、あらゆるお客様と接することで、自分が知らない情報を得られるのも美容師をしていて良かったな、と思うことのひとつ。色々話をすることで、その人のライフスタイルや好みなどを聞き、トータルで似合うヘアスタイルを提案していくので、美容師の仕事のなかでも”会話”というのは大きな意味を持ちますね。あと、僕がサロンで重視しているのが雰囲気作り。ヘアサロンではメニューによっては長時間かかることも多いので、ゲストがリラックスして時間を過ごせる空間作りを目指しています。どうせなら心地よく綺麗になってもらいたいじゃないですか。

  僕が仕事で気をつけているのが、常に新しいものを吸収するアンテナを張り巡らせておく。ということ。トリートメントやヘアカラー、パーマ液にしたって、どんどん新しい製品が出てくるので、それを取り入れながら、古くても良いプロダクトは残していく。そういう姿勢が大事だと思っています。それはもちろんヘアデザインにも共通することで、ゲストの良い部分を引き立てながらも新鮮なヘアスタイルを提案する、という部分に繋がりますよね。だから僕自身、街行く人はもちろん、植物や絵、映画などのあらゆるものからヘアスタイルを創造するインスピレーションを受けるので、サロンを離れている時でも気が付けばヘアデザインの事を考えていますね(笑)。素材を大切に、というのがうちの店のコンセプトなので、ゲストにもその人らしさを最大限に生かせるような髪形を提案しています。素材＝髪、という意味もあるので、トリートメントなど、髪そのものを健やかに美しく保つためのメニューにも力を入れていますね。どんなに流行のヘアスタイルをしても、髪自体が傷んでいれば魅力も半減するので、やはり素材そのものをどれだけ美しくするか、が重要。

  自分のサロンを持ってからというもの、本当に日々忙しくて充実していますが、週に一度の休みには”必ず”といっていいほど、愛娘と過ごします。親バカですけど、やっぱり娘は可愛い(笑)。休日にはゆったりと過ごして心身ともにリラックスすることが、僕の最高のリフレッシュ方法ですね。あと、最近はダーツにもハマっています。バンドをやっていたこともあり、音楽は常に身近にあるけど、今は聴くのが専門ですね。リラックスする時間があるからこそ仕事にも力が入る、オンとオフの切り替えが頑張る力を生み出す秘訣かもしれないです。最後になりましたが、僕自身美容専門学校出身なので、これから美容師を目指す人にメッセージを。美容師って髪を切ることが仕事じゃなく、例えば彫刻のように髪形をデザインして、ゲストのライフスタイルに似合う髪型を創りだすのが仕事。だからこそ、これから美容師を目指す人には、まず想像力を鍛えてほしい。そのうえでたくさんの美容師さんと会話したり、それぞれのスタイリストの仕事や技術を見て、自分はどんなスタイリストになりたいかという明確なヴィジョンを持って努力すれば、きっと夢は叶うと思います。