連載エッセイ

色の魅力にとりつかれたカラリスト、ナカムが考えるヘアカラーの世界“茶”のソムリエが語るラグジュなカラー

1
全10回
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10

更新日:2007年3月13日

其の二.「四十八茶百鼠」を知っていますか?

文化は制限された中にこそ花開く。江戸時代には身分の差が見た目ですぐにわかるよう、服装から食事に至るまでさまざまな制約が課せられていました。今回は、そんな中で生まれた古き良き日本の色の伝統についてナカムが語ってくれました。
オフィスの規則にしばられて、それでもおしゃれにこだわる女性の姿に、通じるものがあるかも!?

四十八茶百鼠を知っていますか?

“しじゅうはっちゃひゃくねずみ”
と読みます。

これは、江戸時代後期の言葉で
ナカムも3年前に偶然出会ってから
深く感銘を受けている一語であります。

江戸時代後期ごろ。
町人や商人は徐々に生活が豊かになってきて、
着るモノの素材や色に変化がでてきたそうです。
良いものを着たい。
キレイな色を着たい。
そう思うのは当然の事ですが、

幕府のお役人様は良い顔をしません。

なにせ階級社会にして、
きているモノの素材と色が大して変わらなく
なってきてしまっているのですから・・・・。

そこで、ぜいたくを禁ずる
“奢侈禁止令(しゃしきんしれい)”を
幾度となく発令しました。

贅沢禁止令です。

それは、
庶民の“着物の色・柄・生地”にまでも
細かい規定を設けたものでした。

確か、食べていいものの他に、
花札やカルタ、花火などの遊びまでも
禁止にされたようです。

衣服(着物)に関して公然と身につけられるモノは
素材は“麻素材”もしくは“綿素材”
色は“茶色”“鼠色”“納戸色(紺色)”
のみと限定されてしまいました。

現代ではありえない話ですが、
もし、みなさんが着て良い色に
制限をかけられたらどうします??
『隠れてコソコソ着る?』
『諦める?』

当時の庶民の人々の色彩の欲求は
この3色に集中し、
それぞれの色の中に微妙な色調を工夫して
着物を染め上げ、
それぞれの色彩の違いを楽しんだのです。

そのため、とくに
茶色と鼠系統の多彩な色合いが生まれ、
そのつど、新しい“色名”が次々とつけられたそうです。

決して華やかでない色文化ですが、
粋で洗練された日本の色彩文化がここに誕生しました。

四十八色の茶色と百色の鼠色
(本当は共に100をゆうに越える名前がありますが、
言葉のゴロ遊びで、四十八茶百鼠 という。)
が当時、存在したのにも驚きですが、

その微妙な色彩の違いを当時の人々は
見極め、楽しんでいたというから驚きである。

私達日本人の先祖である。
遠かれど、遺伝子は受け継いでいるはずである。
そもそも、日本人は
色彩を分析し見分ける能力が世界でもトップクラスなのが
科学的に立証されているらしいが、
その遺伝子のおかげであるのかもしれない。

私は色を扱う仕事をしている。
表現するのはヒトの髪の毛である。
日本人を中心に活動していると、
そのヘアカラーの大半は“ブラウン”である。

日本人の髪は黒髪と言われているが、
実は黒ではなく、限りなく黒に近い濁った茶色。
ヘアカラーをするとだんだん茶色があらわになってきて、
徐々に透明感がうまれてくる。
完全に色素を取り除いていくと限りなく白に近い色になるが、
基本は茶色。

そう。  “茶色”  なのだ。

だから、日本人のカラリストとして茶色を極めるのは必然。
薬剤〔カラー剤〕をそれぞれの素材に対して
微妙な割合で配合し、個々の髪色を創りだすこの
“カラリスト”という仕事は
まさに“四十八茶百鼠”の精神を
引き継いでいるのであるかのようである。

あるコピーライターの方が面白い事をいっていた。
『もし、江戸時代にヘアカラーが存在していたらどうだったでしょうね?』
着物と同じく、それぞれの髪色にも
微妙で繊細な茶色の色彩があったのかもしれない。

そんな空想ごっこをしてみながら、
現代に目をやってみると、
言葉は悪いが
“色彩に対して現代は非常に幼い”
そんな気がする。

深くないというか、奥行きがないのである。

ヘアカラー一つとってみても、
明るい。暗い。軽い。重い。・・・・・。
その程度だったりする。

ブームで始まったヘアカラーは社会的に認知され、
誰もがするようになった。
これはもう、立派な文化である。
そして、
現代の茶色の文化は間違いなくヘアカラーなのである。

微妙で繊細な茶色の文化。
この日本独特の精神を、現代の茶色の文化として復活させたい。
そう思って茶色のカラーバリエーションサンプルを
100種類用意した“imaii百茶”(※)をつくってみました。

編集部注:
「imaii百茶」
imaii百茶とは、お茶の色から考えられた
100色もの茶色のカラーバリエーションサンプルのこと。
<薄茶>、<胡桃色>、<萌黄>、<璃寛茶>など、
女性心をくすぐる名前がつけられたサンプルは、
imaiiカラリストチームが1色1色研究して作成したものだとか。
http://mycasty.jp/imaiinews/html/2007-03/03-21-674439.html

微妙な色の染め分けを一人一人違う髪色の上に
再現するのは難しいことではあるが、
カラリストの力の見せ所だと思う。

日本にはこんなにも素敵な
“色彩の文化”が過去にあったのだから、
みなさんももっと繊細に色にこだわってみてはいかがだろうか?
とりあえずは、いつも身につけている
“頭の色”から・・・。

参考リンク:
「四十八茶百鼠」とはどんな色?
http://osaka.yomiuri.co.jp/shikisai/sz60901a.htm


※2007年3月13日公開時点での情報です。料金の表記は本文に明記のない限り消費税5%の税込価格です。
「あなたの感想」をお聞かせください。
※上のどれかのボタンを押すと編集部宛てに感想を送信できます
最新のらしさ特集
らしさ特集  バックナンバー